なぜ相続争いは生じるのか?
この記事と出会ったあなたは、めでたく相続人の間での話し合いが終わった段階と思われます。
もし、まだでしたら相続の際して最もめんどうなことがこの「話し合い」になりますので、まずそちらを優先して真剣に取り組むことをお奨めします。
わずかでも手を抜くと争いのもととなりやすいのが相続問題ではないでしょうか。私は実際にかつてこの問題に巻き込まれた経験がありますので、私の体験を参考にしていただきたいと思います。
少し長くなるので、お急ぎの方は私の相続争い体験は読み飛ばしてください。(目次から飛んでください。)
相続人それぞれ自分の考えが正しいと思っているから厄介
そもそも我々日本人は「話し合い」が下手です。正しい結論を導き出すためには冷静な論理の組み立て作業が必要になりますが、大方の日本人は感情的になりやすいので、その作業が苦手なのです。
なので、親族の中にひとりでも冷静に話し合いができそうにない者がいる場合は、早々に専門家(弁護士等)に相談するのが賢いやり方と思います。
私が巻き込まれた相続争いは、子どものいない伯母の遺産を巡る争いでした。
伯母の生存する一人の弟とすでに他界した兄弟の10人以上もの子どもたちが法定相続人となりました。日頃伯母のそばで何かと世話をしていた私のいとこが代表となって葬儀・四十九日法要を済ませた後、相続案を提示しましたが、この10数人の相続人は賛成派と反対派に分かれ、反対派が弁護士を立てて訴訟となりましたので、否が応でも私も立場を鮮明にするよう追い込まれました。
「公平」とは何か?
双方の考えは、簡単に言えば「公平」の考え方に違いがありました。いとこの提案は、不動産については損害の可能性等難しい問題があるので、自分が一括して相続するという考えでした。私は、その説明に納得できたし、現金についても彼が多めに受け取る資格があると思っていましたので、彼の方につきました。
ところが、反対派は杓子定規に「不動産も含めてすべて資産価値を相続人分で割るのが公平というものだ。」という考えから訴訟に踏み切ったのでした。
訴訟の結論を申しますと、弁護士同士の話し合いで和解となりました。内容は、不動産はすべて彼らが取り、その分を勘案して現金を分けるということだったと思います。私からすれば、当初より取り分が増えた印象でした。
その後、問題の土地は売却するでもなく、荒れたままの建物もあるなど、いとこの言うことを聞かなかった反対派は、悪徳弁護士の餌食になったのではないかと思うような展開でした。
相続手続きの流れ
お金の相続
さて、相続と言えば、財産の相続ですからメインはお金と不動産ということになります。お金にもいろいろありますが、ここでは個人の銀行口座ということに限定してお話します。
銀行の相続手続きとは、故人の口座の解約(凍結)か名義変更の手続きということです。
葬儀の際、葬儀会社との打ち合わせにおいて新聞紙上に広告を出すことに同意しますと、それに合わせて自動的に銀行の口座が凍結されます。逆に、広告を出さなければ金融機関も分からないので、口座は当面生きていますが、相続手続きを取りに金融機関に申請した時点でストップということになります。
銀行での相続手続きには、故人(被相続人)と相続人戸籍謄本や実印(印鑑証明書も)が必要になります。これらの必要書類は、不動産登記でも必要になりますので、双方同時並行で進めることが効率よいやり方になります。
すなわち、必要書類はお願いすれば返してもらえるので、何度も市役所(役場)にいかなくて済みます。私は、10年以上前に使用した父親の戸籍謄本(全部証明)等書類をそのまま提出してみたら受け付けてもらえました。
また、平成29年からは「法定相続情報証明制度」という制度が出来ましたので便利になったようです。これは、申請すれば無料で利用できるということなので2か所以上に出向く必要がある場合は法務局に申し出るとよいでしょう。
相続に伴う不動産登記を「自分で」申請する
理想的には専門家(司法書士)に依頼するのが賢いやり方
私は平成22年(2010年)父親の死後まもなく法務局に申請しようと出向きました。ところが、「自分でやるんですか?司法書士さんに頼むのが普通ですよ。」と冷たくあしらわれました。
「自分ではやれないんですか?」と返すと、「いや、できないわけではないけど、大変ですよ。」と言われて、申請書を渡されました。
ところが、仕事にかまけてそのままになり、あっという間に10年ほど過ぎ私自身も70の声を聞くまでになってしまい、「自分が急死するようなことがあったら、妻子に面倒かけてしまう」と思い、妹などと相談し、重い腰を上げ始めた途端に今度は母親がなくなりました。
ということで、理想的には専門家(司法書士)に依頼するのが賢いやり方と言えます。司法書士に支払う手数料は10万~20万が相場のようです。後から思えば、たかが10万かそこらで済んだわけです。
わたしの場合は、そんなにかかるのならと思い、私は暇を見て自分でやろうと考えたのでした。しかし、10年以上前はインターネット検索など今のように発達してませんでしたから、結局放っておくことになってしまいました。
しばらくぶりに今回始めるということは、ほぼゼロから始めることになりますので、書類も取りなおすことになり、やはり返って手間がかかりましたので、自分でやるにしても一気に短期間にやることをお奨めします。
法務局に行きまして「自分でやる」と言うと、またもや変な奴が来たという表情で応対を受けました。しかし、これ以上伸ばすわけにもいかないので何回も根気よく通った挙句とうとう登記することができました。
以下に、ネットで調べてから登記が完成するまでのことを私の体験を交えて紹介します。
相続不動産登記に必要な書類
まず、法務局lのホームページにアクセスします。
そして、自分の該当する申請書をダウンロードして記載例を見ながら作成します。例えば、私の時のように「遺産分割協議による相続(相続人全員で話し合いをする場合)」からダウンロードすると、次のような記載例のPDFがあります。
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001215873.pdf
重要なのは記載例をよく読むこと、特に「注」(PDF5~7頁)をよく読むことです。
必要書類は、注4,5,6に書いてあります。
- 申請書(実印と印鑑証明も)
- 被相続人(死亡した方)の出生から死亡まで の経過の記載が分かる戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
- 除籍全部事項証明書(除籍謄本)
- 相続人全員の戸籍全部(一部) 事項証明書(戸籍謄抄本)
- 相続人全員の住民票の写し
また、上記書類のほかに「課税価格」「登録免許税」(注16,17)を記入するには、固定資産課税台帳を見て書きます。私は、役場から送付された固定資産税の請求書を見て計算しました。申請時に「何を見て書きましたか?」と問われるので参考資料として持参します。(ちなみに昨年度のものではだめと言われて書き直すという失敗をしました。)
さらに、「不動産の表示」の不動産番号は事前に法務局で該当する不動産の登記のコピーを取っていたので分かりました。(私の場合、このとき未登記の建物があることを知りましたが、これまためんどうなので今回は「未登記」と表記して日を改めて専門家に頼もうかと思っています。)
遺産分割協議書
金融機関や法務局から遺産分割協議書を求められる場合がありますので、これは必ず準備しておきましょう。当然、この協議(話し合い)によって遺産の分割が決定されたわけですから。