不登校の解決に役立つブリーフセラピーという考え方
ブリーフセラピーは宗教的解決を科学で実践する
私の理解では、ブリーフセラピーの考え方の二本柱は、「外在化」と「原因を求めず結
果を追求する」の2点だと思います。そして、この2点をシンプルに表現すると、「宗教
的解決」と言ってもいいと思います。
私はブリーフセラピー協会の会員でも研究者でもないので、「生かじり」の域を脱して
いないと思いますが、当協会が発足したころ、当時教師をしていた私は彼らの考え方を
カウンセリングの最先端と捉え、関連の月刊雑誌を毎月熟読したものです。
当ブログでは、私が理解している範囲で、私の経験も含めて不登校問題の解決に役立て
るかもしれない情報を提供したいと思います。
不登校の原因を外在化する効果
「外在化」とは、現在の不幸な辛い状況の原因を内側に求めず外に求めるという意味で
す。
多くの人は、この体験を幼少時代に体験しているのではないでしょうか。たとえば、
「いたいのいたいのとんでいけ!」と言って、痛みを追い出した体験は外在化と言えま
す。
不登校の場合で言えば、まず、原因を子ども自身や母親に求めることを止めます。
具体的にすることは、原因となるものを仮に例えば「学校嫌い虫」とか名付けます。名
付けた時点で、外在化したと言えます。これを書いた紙に向かって、夜な夜な家族で祈
るように出ていくよう唱えてみた(そして燃やしたかもしれません)という事例を読ん
だ記憶があります。
宗教的というよりは、もっと原始的な、人類が長い間蓄えてきた伝統的な知恵ともいう
べき「儀式」と言えるのではないでしょうか。この「学校嫌い虫」はまさに「悪鬼」で
あり「
悪魔」とも言えるでしょう。
この行為(即ち「外在化」)は、誤解を恐れずさらに分かりやすく言えば、「自分のせ
いにしないで人のせいにすること」ということです。自分に都合の悪いことを人のせい
にできる人は、ある意味「強い人」です。ことごとく自分のせいにしがちな人はどんど
んストレスが溜まっていくのに対して、人のせいにできる人はストレスとは無縁でしょ
う。
まあ、この表現は少々極端ですね。「人のせい」ばかりしていると、嫌われて孤立する
結果としてストレスを感じることになるでしょうから、現実的な選択肢とは言えません。
そこで、先人は「人のせい」ではなく、悪魔などの「象徴的な存在のせい」にしてきた
わけです。
不登校は原因よりも結果を追求して解決する
全く原因を無視せよということではありません。いじめなど原因がはっきりしているこ
とから逃げてはいけません。しかし、多くの場合不登校は原因不明か、原因が分かって
いても簡単に解決しない場合が多いのです。
そこで、ブリーフセラピーでは、むしろ「結果を追求」することで解決法を探ります。
子どもは、過去を向いてる存在ではありません。常に未来を向いて生きる存在なのです。
そして、子どもは我々大人が考える以上のスピードで成長しています。一見、不登校状
態の中に停滞しているように見える子どもの生命(精神+肉体)の内側では、発達・成
長の活動が不断に営まれているはずです。
「原因よりも結果を追求」という考え方は、実は仏教的な考え方です。お釈迦様は、万
物のすべてが「因縁果報」の法則のもとにあることを説いています。即ち、現世のおけ
る不幸や苦痛の原因は過去(前世等)にあると。ここまで聞くと、諦めの気分になって
しまいそうですが、ここまででは実は教えの半分でしかありません。
もう半分とは、「未来の結果の原因は現在にある」という点です。この点が、ブリーフ
セラピーの考え方に一致する点だと思います。
すなわち、ブリーフセラピーでは、「未来のあるべき姿のために、現在の兆候に着目」
します。
たとえば、今日一日の様子を日記に書いたとします。その中に書かれていることを読む
と、やはりほとんどがネガティブな言葉ばかりが羅列されていることでしょう。しかし、
カウンセラーは、その中に輝く一粒のポジティブな言葉を見逃しません。すかさず、そ
こにスポットを当ててクローズアップさせるでしょう。それが、「良い兆候」であるこ
とを指摘して、その芽を育て伸ばしていくことにエネルギーを注いでいけばいいのです。
これは、言葉だけではありません。不登校の特徴である様々な身体的症状(表現)のわ
ずかな変化も見逃さないようにします。一見、「悪化」とも思われる兆候もポジティブ
に捉えてみます。
そうした子どもの「あるべき未来に」つながる言葉や行動の断片の点と点をつないで線
にしていく作業は、とても生産的で建設的なかかわり方ではないでしょうか。
ブリーフセラピーは、あるべき未来の姿をイメージさせる
すなわち、原因となる現在の行為として、今「あるべき未来の姿をイメージ」するとい
う行為が、結果として未来において実現するもととなるという考えです。
最近は、スポーツの世界で当たり前のように実践されている「イメージトレーニング」
に近いと思います。なので、優れた一流のアスリートは常に前向きですよね。
実は、名前こそ「イメージトレーニング」と科学的で現代的のように響きますが、何の
ことはない「祈り」という言葉で表現できる行為ではないでしょうか。
それはそうと、ブリーフセラピーでの具体例を紹介しましょう。
「ある朝目が覚めたら、不登校状態がすっかり解決してしまっていました。気分は爽快
で自然に体も動き、これからベッドを抜け出して学校にも行けそうです。そし
て、・・・」
確かこんなイメージだったと思います。
このように、なるべく具体的に詳細に未来のあるべき姿をイメージすることが自然にで
きるようになるといいですね。
多くの子が中3のある時期に再登校を始めるわけは、体と精神の発達とともに、未来の
姿を進学・受験等で具体的にイメージしやすくなるからと思われます。
自室に引きこもってゲーム三昧だった子も、ゲームを通して様々な未来を描く機会を得
ていると思います。プロのゲーマーになって稼ぎたい。仲間とつながりたい。ゲームを
自分で作ってみたい。プログラマーになりたい、アニメ作家になりたい。そのためには、
やっぱり高校か、専門学校か、大学か、英語力が必要か、・・等々。
そうした「未来へのイメージ」を繰り返していくうちに、自然と不登校状態から抜けて
いくのではないでしょうか。