法華経 方便品の現代語逐語訳

方便品についても逐語訳を載せますので、参考にしてください。

以下からのコピー＆編集です。⇩

上段：漢文

中段：訓読

下段：通釈

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妙法蓮華経方便品第二

爾時世尊。従三昧。安詳而起。告舎利弗。

爾その時ときに世尊せそん、三昧さんまいより、安詳あんじょうとして起たって、舎利弗しゃりほつに告げたまわく、

その時に、世尊は無量義処三昧という深い冥想めいそうから、真実の智慧をもって、ゆったりと厳おごそかに起ち上がり、智慧第一の舎利弗にお告げになった。

諸仏智慧。甚深無量。其智慧門。難解難入。

諸仏しょぶつの智慧ちえは、甚深じんじん無量むりょうなり。其その智慧ちえの門もんは、難解なんげ難入なんにゅうなり。

「あらゆる仏が有する真実の智慧は、はるかに深遠であって無量である。その智慧の門は、実に難解であって入りがたい。

一切声聞。辟支仏。所 不 能 知 。

一切いっさいの^④声聞しょうもん、^⑤辟支仏ひゃくしぶつの知しること能あたわざる所ところなり。

すべての声聞や辟支仏には、けっして知ることのできないものである。

所 以 者 何 。 仏 曾 親 近 。 百 千 万 億 。 無 数 諸 仏 。

所以ゆえは何いかん。仏ほとけ曾かつて、百千万億ひゃくせんまんのく無数むしゅの諸仏しょぶつに親近しんごんし、

仏は、過去において百千万億もの無数の諸仏のもとで間近く仕え、

尽行諸仏。無量道法。勇 猛 精 進。名 称 普 聞。

尽ことごとく諸仏しょぶつの無量むりょうの道法どうほうを行ぎょうじ、^⑥勇猛ゆうもう精進しょうじんして、名称みょうしょう普あまねく聞きこえたまえり。

それぞれの仏の持つ無量の仏道の法をことごとく行じ、意志堅固に、勇んで精進を重ねてきた。そしてその崇高な名声は、一切に聞こえわったのである。

成就甚深。 未曾有法。随宜所説。意趣難解。

甚深じんじん^⑦未曾有みぞうの法ほうを成就じょうじゅして、宜よろしきに随したがって説ときたもう所ところ、意趣いしゅ解げし難がたし。

このように、はるかに深遠で、いまだかってない法を成就して悟りを得、時や衆生の機根に応じて、様々に説いてきたのであるから、その真意や意向は、実に理解しがたいということである。

舎利弗。吾従成仏已来。種 種 因 縁。種種譬喩。広演言教。

舎利弗しゃりほつ、吾われ成仏じょうぶつしてより已来このかた、種種しゅじゅの因縁いんねん、種種しゅじゅの譬喩ひゆをもって広ひろく言教ごんきょうを演のべ、

舎利弗よ、私は成仏してからこれまでの間、様々な物事の因縁の相や様々な譬喩を用い、広く言辞をもって教えを演説するなど、

無数方便。引 導 衆 生。令 離 諸 著。

無数むしゅの^①方便ほうべんをもって衆生しゅじょうを引導いんどうして、諸もろもろの著じゃくを離はなれしむ。

無数の方便を用いて衆生を仏道へと誘導し、物事へのあらゆる執着から解放させてきた。

所以者何。如来方便。知見波羅蜜。皆已具足

所以ゆえは何いかん。如来にょらいは方便ほうべん、知見ちけん波羅密はらみつ、皆みな已すでに具足ぐそくせり。

それはどうしてかといえば、如来は人々を仏道へ導くための巧妙な方便と、真実の悟りに到達する智慧の一切を具え持っているからである。

舎利弗。如来知見。広大深遠。

舎利弗しゃりほつ、如来にょらいの知見ちけんは広大こうだい深遠じんのんなり。

舎利弗よ、如来の智慧は、まことに広大で限りなく、深遠にして極まることがない。

無量。無礙。力。無所畏。禅 定。解脱。三昧。

無量むりょう、無礙むげ、力りき、無所畏むしょい、禅定ぜんじょう、解脱げだつ、三昧さんまいあって、

したがって衆生の教化における、苦を抜き楽を与える四つの無量心、弁舌にさまたげなき四つの無礙、金剛のような十種の智力、説法に際して畏れなき四つの無所畏、心を一所に定めて静かに真理を思惟しゆいする四つの禅と四つの定の境地、悟りの境地に達すべき禅定法たる八つの解脱、三つの三昧を有して、

深入無際。成就一切。未曾有法。

深ふかく無際むさいに入いり、一切いっさい未曽有みぞうの法ほうを成就じょうじゅせり。

深く際限のない境地に入り、一切にわたっていまだかってない法を成就したのである。

舎利弗。如来能種種分別。巧 説 諸 法。言辞柔軟。悦可衆心。

舎利弗、如来は能く種々に分別し、巧みに諸法を説とき、言辞ごんじ柔軟にゅうなんにして、衆しゅうの心こころを悦可えっかせしむ。

舎利弗よ、如来はよく種々に分別し、巧にあらゆる法を説く。その言辞はまことに柔らかく、衆生の心を悦びで満たすのである。

舎利弗。取要言之。無量無辺。未曾有法。仏悉成就。

舎利弗しゃりほつ。要ようを取って之を言わば、無量むりょう無辺むへん未曾有みぞうの法ほうを、仏ほとけ悉ことごとく成就したまえり。

舎利弗よ、要約してこのことを言うなら、仏は、無量で計り知ることのできない、また、いまだかつてない法を、ことごとく成就したということである。

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止。舎利弗。不須復説。

止やみなん、舎利弗しゃりほつ。復また説くべからず。

しかし、やめよう、舎利弗よ。もはやこれ以上説くべきではない。

所以者何。仏所成就。第一希有。難解之法。唯仏与仏。乃能究尽。諸法実相。

所以ゆえは何いかん。仏ほとけの成就じょうじゅしたまえる所ところは第一だいいち^②稀有けう難解なんげの法ほうなり。唯ただ仏ほとけと仏ほとけとのみ、乃いましし能よく諸法しょほうの実相じっそうを究尽くじんしたまえり。

その理由はどういうことかといえば、仏が成就したものは、最も稀であり、実に理解しがたい法である。

所謂諸法。如是相。如是性。如是体。如是力。如是作。如是因。如是縁。如是果。如是報。如是本末究竟等

所謂いわゆる諸法しょほうの如是相にょぜそう。如是性にょぜしょう。如是体にょぜたい。如是力にょぜりき。如是作にょぜさ。如是因にょぜいん。如是縁にょぜえん。如是果にょぜか。如是報にょぜほう如是にょうぜ本末ほんまっ究竟くきょう等とうなり。

そういうところの実相とは、あらゆる存在法に本然として具わり、また現れているところの如是相、如是性、如是体、如是力、如是作、如是因、如是縁、如是果、如是報、如是本末究竟等である」と。