いじめの芽を初期段階で摘む
いじめはなくならない
最近は,むしろ「大人のいじめ」が問題になっていますが,醒めた言い方をすれば,「大人の子ども化」現象ともいえるでしょう。
構造は同じなので,ここでは子どものいじめについて取り上げたいと思います。
ところで,世間ではいじめをなくそうとして躍起になっていますが,いじめは永遠になくならないと思います。
まあ,この世に住む人がすべて仏様のようになれば,いじめはなくなるでしょう。
しかしながら,方向は同じこととも言えますが,「いじめと戦う」ことは可能です。
「いじめとの戦い」とは相手に個人の尊厳を認めさせる戦い
小さなことを見過ごしてはいけません。そんなことは,いじめとは言わないだろうと思えても,見過ごしているとエスカレートする場合があります。
言葉は悪いが,子どもは(大人にも多いが)つけあがるものです。
個の尊厳を傷つける小さなことを許していると,いじめまで発展しかねません。大人は,このことを子どもに教える必要があります。
具体的には次のようなことです。
1.勝手に他人の物を使用する。 2.勝手に他人のノートなどの所有物に書きこみをする。 3. 相手の悪口をいないところで言う。 |
消しゴムの貸し借りの功罪
例えば,平気で隣の友達の消しゴムを無断拝借する子がいます。これを許していると,いつの間にか持ち物がなくなることが増えてきます。
では,許可があればいいかというとそうではありません。許すとしても一度だけにすべきです。
消しゴムくらいと思うかもしれませんが,その背景には安易に相手を自分の都合のいいように使おうという意図が見えます。
そういうことが将来「お金貸して」という要求に変わる可能性もあります。双方の子どもにとっていいことではありません。
また,自分の消しゴムを持っているのに「貸せ!」ということもありますが,本当に自分で持っていない場合,友だちに消しゴムを借りるのではなく,親に買ってもらうという行動を起こすべきなのです。
すなわち,子どもの文具が不足しているのに気づかない家庭にも問題があるのです。
相手の好き勝手にさせ続けると,「自分の所有物へ頓着しない子」と認識されて,そのうちカバンの中を開けられたり,靴を隠されたりし始めます。
また,自分のいないところで好き勝手な悪口を言うことを許しておくと,いじめが広がります。
子どもの表現力を磨く
今はむしろ「いじめ」という言葉は使いにくくなっています。使えば,過剰反応が予想されるので,当事者も指導する側も慎重になります。
たとえば,「いじめてなんかいない。」「いじめられてなんかいない。」「それは,いじめだよ。」という反応が良く聞こえてきます。
これでは,問題が解決に向かって進展しません。
なので,「いじめ」という言葉は使わずにコミュニケーションをとることがより前向きな方法と言えます。
すなわち,表現力です。
小学校勤務時代の私の経験では,こんな事例がよくありました。
「先生,〇〇ちゃんが嫌なことしてくる。」と訴えてきます。
こういうときの指導者の対処の仕方は,大抵次のどちらかです。
1.(「またか」と思い)「そうか」と,共感だけしてスルーする。
2.(「またか」と思い)相手を呼んで指導する。結論は,「ごめんなさいしなさい。」〇〇ちゃん,いつものとおり「ごめんなさい。」訴えてきた子,うなづいて一件落着。
私は,上記はいずれも根本的な解決になっていないと思います。
こういう場合,私は次のように指導しました。
始めに,訴えてきた子に「自分が嫌だということを言いましたか?」と聞きます。これに対して,「嫌」ということを伝えていない子がこの頃多いのです。
自分の嫌な気持ちを相手に伝えていない理由は,怖いか内気な性格から来ている場合は,一緒に行って教師(おとな)のそばで言わせます。それでも言えない場合は,代わりに伝えてやる必要があります。
しかし,多くは「自分の嫌な気持ちを相手に伝えること」を知らないのです。知らないということは,教わっていないのです。
おそらく,教わっていることは「いじめられたら先生に言うんだよ。」ということだけだったのでしょう。
○○ちゃんにも聞いてみると,「え~?○○ちゃん喜んでいたよ。」と言ったりします。
そうです。「いじめ」られやすい子は心の内は辛くても,結構笑顔で反応してる場合があるのです。あるいは,自分の気持ちを伝えることよりも耐えることを選びやすいようです。
これって,確信犯のいじめっ子は別として,「いじめ」てしまっている方としては,心外ですよね。
なので,まとめますと,いじめとの戦い方の第一歩は,「嫌」という思いを表現することなのです。
表現の仕方
「嫌」という思いを表現するには,次のような段階があると思います。
1.表情で表す(練習が必要かもしれません) 2.表情を作ったうえで「嫌!」と言う。 3.何が嫌なのか具体的に伝える。 4.伝えてもやめなければ,離れる(友だちでなくなる)ことを予告する。(実際に離れる。) 5.さらにやめなければ,教師か親に訴えると予告する。 |
いじめは,「仲間外し」という形で現れる場合もあります。非道なことをするものに対してへつらう必要はありません。
「だれとでも仲良く」というのは現実的ではありませんので,場合によっては友だちを失い孤立することを恐れてはいけないことを普段から教えておくべきでしょう。
ここまでで,大抵は解決するでしょう。「嫌なこと」がもし暴力であるなら,5で防衛反応(=身を守るために対抗するか逃げる)が必要になります。
ここまでで解決しない場合は,本格的な戦いになります。
参考サイト→いじめから子供を守ろうネットワーク